「本日の会合は中止になりました。悪しからず」

「本日の営業は終了となっています。悪しからずご了承ください」。

このような表現、街や会社で目にしたことがありますか?後半はとっても丁寧な言い回しに感じますが、前半はどうでしょう。「えっ、それで終わり?」と感じるかもしれません。

一方、意味はどうでしょう。謝るにしては乱暴な感じもします。

「こんな言い方をして年上や取引先に失礼にあたらないの?」と思う人もいるかもしれませんね。

そこで今回は、悪しからずの意味と使い方、そしてこれが本当に目上の人に敬語として通じるのかを紹介します。

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悪しからずの意味と成り立ち

悪しからずは辞書によれば、以下のような意味になっています。

【悪しからず】

[連語]相手の希望や意向に添えない場合などに用いる語。悪く思わないで。気を悪くしないで。「どうか悪しからず御了承ください」。

さらに調べると、連語とは「二つ以上の単語が連結して、一つの単語と似たような働きをもつもの 」。

悪し(悪い)からず(そう思わないで下さい)という、二つで一つの丁寧な気持ちを表現した言葉になります。

そう、悪しからずは他に何もついていなくても、これ一つで「悪く思わないで下さい、すみません」というかしこまった言い回しなのです。

世間ではあまり良く思われていない?

しかし、いざ世間の声を聞いてみるとこんな意見が聞こえてきます。

自分では“悪しからず”なんて使わない

上から“許せ”って言ってるみたい

馬鹿にされてるみたいで不快

由緒正しい意味に反して、けっこう不評のようです。

言われてみれば確かに、取引先などの文章で最後にぽつんと「悪しからず。」とついていたら、なんだかツンとしているように感じるかもしれません。

謝るようなことをしたのはそっちなのに…。

では、悪しからずはなぜそれだけで定型文として広まったのでしょう。

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悪しからずとビジネス、江戸の粋

悪しからずという言葉についてさらに調べていくと、連用止めという言葉が出てきました。

連用止め

動詞・形容詞・形容動詞に続く形(連用形)の状態でフレーズを締める技法。

簡単に言うと、「悪しからず…の後は?」と聞きたくなるような、そのあとに何か続きそうな形で止めること。

正確には、形容詞の形で止めることを指します。

悪しからずは言葉の性質上、「途中で止めなければならない」宿命を負っていたんですね。

ではなぜ連用止めなのか?それは、「悪いことをしてすみません」という意味に加えて、「これ以上殊更に念を押すような不粋な言い回しを避ける」という意味を持たせるためです。

つまり、「悪いとは思ってるけどこれ以上のツッコミはなしにしよう 」という思惑が含まれているのです。

この起源は古くは江戸時代、文人墨客や都市の町人たちの間に「無駄な諍いを避けよう」という意味での「粋」の概念が浸透したことに遡ります。

江戸と言えばかつての大都会。「火事と喧嘩は江戸の花」と揶揄された一方で、大勢の人が暮らす街の治安を守るため、実用的なマナーが考えられた土地柄です。

そのため、「悪しからずと最後についていたら喧嘩はなしだ」というルールに繋がり、今にもビジネスマナーとして伝わっているのですね。

年上にも使える「悪しからず」は?

さて、歴史上の成り立ちも知ったところで、実用的な例文について触れていきましょう。

「悪しからず」だけで丁寧な意味が含まれているのはわかった。本来ならそれだけでどんな場面にも使える素敵な言葉です。

でも言葉は結局、こちらの意図が通じなくては意味がありません。

なので、歴史は歴史として噛みしめながらも、やはり悪しからずだけで使うのはやめた方がいいでしょう。

例)この度は予定に急な変更がありました。悪しからずご了承ください。

  以前、情報の行き違いがあったようです。悪しからずご容赦ください。

これならどんなビジネスの場で使ってもばっちりでしょう。

まとめ

悪しからずという言葉を紐解くと、言い切りの形に深い意味が込められていることがわかりました。

昔の人たちはこの言葉で、見えない相手であっても親しみと友愛の気持ちを伝えようとしていたのかもしれません。

そう考えると「悪しからず」だけなのもなかなか悪くないですね。

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