「この度の申し出、やぶさかでないので引き受けさせていただきます」。

皆さんは普段、こんな言い回しを目にしたことがあるでしょうか。

最後が「引き受ける」になっているので、了承してくれていることはわかりますが…その前の意味は?

言われてみるとやぶさかでないって、はっきりとこれだ!と言える意味がわからないですね。

そこで今回は、例文と共にやぶさかでないの意味、使い方と誤用について紹介しましょう。

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やぶさかでないは否定?肯定?

やぶさかを辞書で引くと、以下のような説明が出てきます。

【やぶさ‐か【×吝か】】
[形動][文][ナリ]

1 (「…にやぶさかでない」の形で)…する努力を惜しまない。喜んで…する。「協力するに吝かではない」

2 思い切りの悪いさま。「民衆も天才を認めることに―であるとは信じ難い」〈芥川・侏儒の言葉〉

3 物惜しみするさま。けちなさま。「たとひ驕且 (きゃうしゃ) にして―ならば、其の余は観るに足らざらくのみ」〈文明本論語抄・四〉

実は、「やぶさか」はそれだけで使うと否定的な意味、否定の言葉を添えると肯定的な意味 になります。ややこしいですね。

しかし世間で一般的に使われているのは「やぶさかでない」なので、これの正しい意味は「喜んで」ということになります。

かく言う私も、やぶさかでない…と言われると、「悪くないな」と喜んでいる意味だと思っていました。

世間に広まる誤用のイメージ

しかし、実はこんなデータがあります。

平成25年度の「国語に関する世論調査」では「やぶさかでない」を「仕方なくする」で使う人が43.7% 。「喜んでする」で使う人が33.8% 。

なんと、「仕方ない」と誤用する人の割合が正しく使う人の割合を上回っています

なぜこうなってしまったのでしょう。考えるに、「やぶさか」はそれだけで句切ると「思い切りが悪い」という意味があるので、それが「渋々やる」→「仕方なくやる」と変化していったのではないでしょうか。

本来は「喜んで」が正しい意味ですが、少しの違いでネガティブな意味にもなる以上、「仕方なく」も誤用と断じることは出来ません。

これでは正しく使おうと思っても、相手に悪いイメージを与えてしまうかもしれません。

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気持ちよく正しく使うための例文

否定的でも肯定的でもあるやぶさかでない。これを誤解を招くことなく正しく使うためには、どういう文にすればいいでしょう。

以下、それぞれの場合での例文です。

例)ありがたい申し出に、こちら共もやぶさかではありません。

これは否定形にすることで「喜んで」の意味で使っています。

世間の誤用のイメージもふまえ、前半にポジティブな褒め言葉を添えました。

例)誠に申し訳ないことですが、突然の変更はやぶさかであると思わざるを得ません。

こちらはそのまま使って「思い切りが悪い」「自分が渋っている様子」を表現しています。

これも前半がネガティブな言葉なので、あまりいい意味じゃないなというのが伝わるはずです。

結局どちらを使う方がいいのか

さて、ここでは二つの意味をもつ「やぶさか」を、それぞれ正しい意味で伝わるように例文を紹介してみました。

でもこれで本当に真意が伝わるのでしょうか?

冷静に考えてみると、誤用派43%に対し、正解が33%ということは、4割と3割なわけで、どちらの意味で使っても誤解される可能性があるといえます。

そもそも「ない」がつくか否かで意味が変わることを知っている人の方が少ないでしょう。

ということは、「やぶさかだ」という言葉自体がマイナーということになります。

そうであれば、より一般的である「やぶさかでない」という表現を用いる方が適切であり、その場合は前述のように一言添えて誤解を招かないようにするのが得策なのではないでしょうか。

これを読んだ皆さんはぜひやぶさかでない、喜んで を使っていきましょう。

まとめ

やぶさかでない。聞いたことこそありますが、いざ調べてみるとなかなか複雑な言葉ですね。

世間で誤用が広まるパターンは多くありますが、今回の場合はやや拮抗しているように感じるのが特徴です。

完全に誤用の方が独り歩きしてしまっている場合は変化と捉えるしかありませんが、「やぶさかでない」はまだ正解の人も多い様子。

きちんと正しい意味で使ってあげましょう。

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